PSpice 入門−第 7 章

7. トランスを用いたシミュレーション

 ここでは「電子回路シミュレータ SPICE 実践編」の第 3 章 p. 56 に出てくるトランスを用いたシミュレーションについて述べます。というのも,そのシミュレーションが上手くいかないというメールを頂戴したからです。パラメータなどの設定まで詳しく書いてみます。ですので,トランスに関する理論的な記述はありません。トランスの巻き線数の比は電圧の比と等しくなりますが,そのシミュレーションは結果は載せておらず(波形を表示するのを忘れたため),電源投入時のピーク電流と 1 次側の電流が無駄に流れる結果を表示しています。

7.1 回路図の描画

 「電子回路シミュレータ SPICE 実践編」 第 3 章 p. 57 の 図 3-3 に従って回路図を描きます。トランスを利用するには,部品を配置するためのウィンドウ Place Part ([Place]−[Part] をクリックすると開く)で,Add Library... をクリック後,breakout.olb を選択して 開く をクリックすると BREAKOUT というライブラリが追加されますので,そこから XFRM_NONLINEAR というトランスを選択してください。

 D1N4002 という汎用の整流ダイオードは,eval というライブラリに保存されていますので,BREAKOUT ライブラリを追加した手順と同じように eval.olb を追加した後,EVAL ライブラリから D1N4002 を選択してください。電源は ANALOG ライブラリの VSIN です。その他,抵抗や電解コンデンサ(部品名:C_elect)も配置して,抵抗値などを設定してください。 図 7.1 のようになりましたでしょうか? トランスの設定については 7.2 節に示します。なお,図 7.1 には 0V や-47.45e-24V などと表示されていますが,これは私がシミュレーションを行った後の回路図を掲載しているためです。シミュレーションを行う前の段階では表示されません。以下の図に関しても同様です。

図 7.1 回路図を描画 (トランスの設定はまだ)

7.2 トランスの設定

 実は,図 7.1 のままではシミュレーションはできません。このことは「電子回路シミュレータ SPICE 実践編」第 10 章 p. 233 に述べられていて,原因はトランスの設定にあります。ではトランスの設定を行っていきます。

 まず,トランスの回路図をダブルクリックします。すると,図 7.2 のような Property Editor というウィンドウが開きます。色々な項目が表示されていますが,図 7.2 のような項目を表示するには,Delete Property ボタンの右側の Filtered by:< Current properties > に設定してください。図 7.2 のような項もkが表示されれば,Implementation という項目を TN33_20_11_2P90 から kbreak に書き換えてください。書き換え方は,変更したい部分をクリックすれば,キーボードで入力可能になります。この項目を変更しないと,トランスは利用できません。

図 7.2 Property Editor でトランスの設定

 続いて,トランスの 1 次巻き線数,2 次巻き線数を設定します。それらも Property Editor から設定可能で,L1_TURNSL2_TURNS の項目を変更してください。これらの項目には斜線が掛かっていますが,Implementation の項と同様に変更可能です。なお,図 7.2 は L1_TURNS まで変更を加えた図です。なお,シミュレーション後に回路図の部品をクリックすると,Property Editor は 図 7.3 のように 2 行表示されます。この際,パラメータを変更するのであれば黄色い行の方を変更して,Apply ボタンをクリックしてください。すると変更が回路図に反映されます。

図 7.3 シミュレーション後の部品のパラメータの再設定

 必要な項目の変更が終了したら,Apply ボタンをクリックして,×ボタンをクリックするなどして Property Editor を終了させてください。回路図は 図 7.4 のようになるはずです。

図 7.4 トランス設定後の回路図

 「電子回路シミュレータ SPICE 実践編」の 図 3-3 (a) では,トランスの回路図の下部に Implementation = kbreakL1_TURNS = 25000L2_TURNS = 5000COUPLING = 0.99Value = XFRM_NONLINEAR と表示されていますが,これらを表示する方法に関して述べます。巻き線数などパラメータの設定は既に完了していますので,これらを表示させなくてもシミュレーションは行えますので,以下の段落は読み飛ばしていただいても結構です。

 では,トランスの回路図をダブルクリックして先ほど表示させた Property Editor を再び開いてください。そして,表示させたい項目のパラメータ(例えば kbreak )をクリックした後 Display... ボタンをクリックすると,Display Properties ウィンドウが開きますので,図 7.5 のように Display Format から Name and Value をクリックして OK ボタンをクリックしてください。

図 7.5 Display Properties の設定

 これと同様のことを,回路図に表示させたい項目について繰り返します。そして,Property Editor を閉じてください。すると回路図は 図 7.6 のように,表示させたい項目が重なって表示されます。このまま,一部の項目をドラッグして移動させようとすると,ピンク色で選択された部分がすべて移動するので,一度ピンク色以外の部分をクリックしてピンク色が消えてから(つまり,選択範囲が解除されてから),移動させたい項目をドラッグしてください。

図 7.6 Display Properties で設定直後の回路図

 綺麗に表示されている項目を整えると,図 7.7 のように,「電子回路シミュレータ SPICE 実践編」の 図 3-3 (a) と同様の回路図が得られます。

図 7.7 綺麗に整えた回路図

7.3 シミュレーション

 ここでは,「電子回路シミュレータ SPICE 実践編」の 図 3-3 と同様に過渡解析(時間変化による回路内の変化を見る)を行います。まず,Simulation Settings ウィンドウ([PSpice]−[Edit Simulation Profile] をクリック)の Analysis type:Time Domain (Transient) に設定します。次に,シミュレーション時間を設定するため,Run to time:200ms と入力して OK をクリックして Simulation Settings を終了します。そして,シミュレーションを実行([PSpice]−[Run] をクリック)します。

図 7.8 Simulation Settings

 ここで波形が表示されればシミュレーション完了です。ですが,場合によっては 図 7.9 のように Convergence problem in transient analysis というエラーが起きるかもしれません。

図 7.9 Convergence problem in transient analysis

 このエラーについては 7.4.2 節で述べます。ここではエラーを回避する方法について述べます。まず,現在表示されている PSpice Runtime Settings ウィンドウを OK をクリックして閉じます。そして,シミュレーションのウィンドウ PSpice A/D Lite も×印を押すなどして閉じてください。 PSpice A/D Lite を閉じる際,A simulation is currently running. Stop and close the simulation? と聞かれますが,OK をクリックして閉じてください。その後,再び Simulation Settings ウィンドウ([PSpice]−[Edit Simulation Profile] をクリック)を開き,図 7.10 のように Transient options 枠の Maximum step size:0.1m に設定してから,再びシミュレーションを実行してください。それでも上手くいかない場合は,Maximum step size をより小さめの値に設定してください。ただし,この値は「何秒間隔で計測データを収集するか」を表すため,あまりにも小さい値を設定するとシミュレーション完了までにかなりの時間を要することになります。

図 7.10 Maximum step size の設定

 無事にシミュレーションが完了し,シミュレーションのウィンドウ PSpice A/D Lite の [Plot]−[Add Y Axis] ( Y 座標の追加) や [Trace]−[Add Trace...] (表示させる波形の追加) をクリックして各種設定を行うことで,図 7.11 のような波形が得られます。

図 7.11 シミュレーション波形

7.4 シミュレーションエラー

7.4.1 ERROR -- Model TN33_20_11_2P90 used by X_TX1.K_TX1 is undefined

 このエラーは,トランスの Implementation パラメータを TN33_20_11_2P90 のままに設定しているためです。7.2 節に従って変更してください。

7.4.2 ERROR -- Convergence problem in transient analysis at Time = ???

 PSpice は回路の解析を行うために,回路図に基づいて微分方程式を解きます。その際,何度か計算を繰り返しても値が収束しない場合にこのエラーが表示されます。このエラーは,計算する最大回数を変更したり,何秒ごとに観測するのかという値を変更することで回避できる可能性があります。7.3 節を参照してください。



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